トップ > 提言 > 2011提言

電力ピーク負荷低減のための地中熱利用ヒートポンプの導入促進の提言

電力ピーク負荷低減のための地中熱利用ヒートポンプの導入促進の提言

平成23年4月6日
日本地熱学会地中熱利用技術専門部会

東日本大震災と原発事故の影響のため、夏季に深刻な電力不足が想定されている。この最大の要因は冷房需要である。地中熱利用ヒートポンプは地中を熱源として空調を行うた め、現在の冷房機器の主たる方式である空気熱源ヒートポンプと比べて高効率の運転が可能であり、消費電力を3分の1削減することができる。この夏は東京電力管内で850万kWの不足が予想されているが、ピーク時間帯において全エアコンの消費電力1000万kWを3分の1削減すれば330万kWの節約ができる。また廃熱を地中に放出するためヒートアイランド現象の緩和が期待され、都内のオフィスビル街区を地中熱利用ヒートポンプに置き換えた場合、最高気温で1.2℃程度のヒートアイランド緩和効果が試算されている(玄地、2001)。仮に気温を1℃下げることができれば170万kWの節約ができ、両者の効果によって夏のピーク負荷を500万kW低減させることが可能となる。このように省エネルギー技術である地中熱利用ヒートポンプの導入を進めることにより、結果的に災害時における安 定的な電力供給を現在よりも容易にし、停電の回避により日本経済への影響を抑えることができると期待される。

しかし、地中熱利用ヒートポンプの普及拡大への道のりは現時点では決して平坦ではない。普及を妨げる最大の要因はイニシャルコストが高額であることと、認知度が低いこと である。現在、地中熱利用ヒートポンプの導入量が世界一である米国においても現在に至るまでには50年以上の歳月を費やしており、地中熱利用に対する取り組みの浅い我が国では、通常であればかなりの時間を要するものと思われる。一方で、中国・韓国では法律を整備して政府が積極的にイニシアチブを取ることにより、地中熱利用の導入が急速に進んでいる。経済性のみに着目すると普及には長い年数が必要であるものの、国家戦略と位置づけることにより我が国においても短期間での導入拡大が可能となるであろう。

日本は自然災害多発国である。今以上に地中熱利用ヒートポンプの普及に力を入れ、その利用を国家の計として促進することは、わが国の社会基盤を強固なものとするために極 めて重要である。現エネルギー供給システムの弱点が露呈した今、我が国はエネルギー政策の大転換を国家百年の計として行うべきである。



なお、この提言後の4月19日、NPO法人地中熱利用促進協会から関連する緊急アピールが出されました。