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我が国の地熱エネルギー利用に関する提言

我が国の地熱エネルギー利用に関する提言

—日本を真の地熱大国に!—

平成20年10月31日
日本地熱学会

提言のポイント


地球温暖化が進行し、現在のままの人間活動を続けていくと、温暖化は更に急速に進行し、人類の生存自体を脅かすことが懸念されている。一方、原油価格は高騰が続き、運輸業・農林水産業を始め各方面に大きな打撃を与えている。そして、原油そのものもいずれ生産のピークを迎え、価格が高騰するだけでなく、その供給自体が次第に逼迫してくることが予想されている。

このような地球温暖化問題及びエネルギー問題は解決されるべき緊急の課題であり、さらには地球規模という広域の、また世代を超えた長期にわたる問題である。ところが、その緊急性への認識はいまだに不十分であり、我が国においてはヨーロッパ等に比べ、その対策が著しく遅れていると言わざるを得ない。

ヨーロッパ等では諸対策の中で再生可能エネルギー利用の促進対策が重要視され、国民の理解の下、種々の積極的な政策が実施されている。例えば、ドイツでは再生可能エネルギーが積極的に導入され、今後も大きく進展することが期待されている。

このような中で、ごく最近、我が国も改めて太陽光発電を重要視する政策を取り始めているが、他の再生可能エネルギー促進に取り組む姿勢は余りにも弱い。特に、我が国に十分な資源量が存在し、かつ、現在、再生可能エネルギーの中では、年間電力発生量において、水力発電に次いで風力発電と肩を並べる地熱発電への政府の取り組みは、余りに不十分である。

地熱資源は、地下資源であることから開発リスクが大きく、それに起因して化石燃料に比較して発電コストが高いため、自由競争の電力市場の中では、開発に対するインセンティブが働かず、資源量はあるが開発が進まないという状況にある。また、地熱資源の再生性に対する理解不足から、天然蒸気を利用した地熱発電がグリーン電力としての特典であるRPS法で認定されていない。さらに、良質な地熱資源の多くが国立公園内に存在することが推定される一方、国立公園内では坑井掘削による精度の高い調査を行うことができない状況にある。また、温泉への影響に対する危惧から、地熱開発有望地域周辺の温泉関係者による反対があり、調査・開発が行えない地域が多く存在している。地熱貯留層の管理技術が発展し、温泉との共生的利用が可能となってきていることを考えると、地熱発電利用と温泉利用の関係の科学的理解に基づいて、双方向のコミュニケーションが図られ、地球の恵みの有効利用につながることを期待したい。

以上のように、持続可能な社会構築に大きな可能性を持つ地熱エネルギーが我が国では正しく評価されず、その利用が促進されていないことは、地熱エネルギーに恵まれた日本国民にとって大きな損失である。このような我が国の現状と比較し、海外では、火山がなく、地熱資源に余り恵まれていないような国々あるいは産油国でさえも、地熱開発に積極的な姿勢を見せており、現実に地熱エネルギーの利用が大きく進展している。また、外国の関係者からは、地熱資源に恵まれている日本がなぜ地熱開発に積極的でないかが疑問視されている。

我が国に地熱資源が十分見込まれないのであれば、その開発利用に消極的になることも止むを得ない。しかし、我が国は米国、インドネシアと並ぶ地熱資源大国である。我が国が真の地熱大国となり、持続可能な社会構築に貢献するためには、政府を始め、各機関、そして国民が、我が国の地熱エネルギーの利用促進に十分な理解を示していただくことを強く呼び掛けたい。そのために、日本地熱学会は努力を惜しまない所存である。

連絡先:野田徹郎(日本地熱学会評議員)