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「中小水力・地熱発電開発費等補助金」に関する取りまとめ結果に関する緊急提言

経済産業省 行政事業レビュー

「中小水力・地熱発電開発費等補助金」に関する取りまとめ結果
に関する緊急提言

平成22年6月23日
日本地熱学会

平成22年5月28日経済産業省は、標記取りまとめ結果を公表した。それによると、「中小水力・地熱発電開発費補助金」に関しては、「廃止を含む抜本的改善」との取りまとめ結果となっている。このうち、地熱発電に関しては、「地熱開発促進調査事業」と「地熱発電 開発事業」の2事業が含まれている。この事業縮減の取りまとめは、時代の要請であるクリーンな国産の再生可能エネルギー開発に逆行するものであり、また、「地球温暖化対策に関する基本法」の趣旨にも反するものであり、そのまま受け入れることはできない。天然資源に乏しいわが国において、特異的に豊富に存在する地熱資源の開発利用は、進めこそすれ、決して後退させるべきものではなく、後退は、国民にとって大きな損失である。

取りまとめ結果における「評価者のコメント」を見ると、たとえば、地熱発電所を造ることのコスト、ヒット率の低さから、別のエネルギーあるいは蓄電池、スマートグリッド等他のやり方に投資すべきとの指摘が多く見られる。これは、再生可能エネルギーの中でも、特別に高い安定性と利用率を持つ地熱エネルギーの特長への理解、あるいは、地下資源としての地熱資源開発の特質への理解の不十分さが根底にあるのではないかと考える。

地熱発電のコストは太陽光発電等他の再生可能エネルギーに比べ十分安いが、火力発電等他の化石燃料発電に比べ、現状では高いのは事実である。しかしながら、それは地熱の 低炭素という利点を考慮しない単純比較による評価である。また、地熱発電は数10年にわたる長期間の運転を続ければ、たとえば、石油火力発電よりも安いコストで発電できることが実証されており、適切な価格設定、たとえば、適切な固定価格買取制度が導入されれば、「発電コスト」問題は大きく改善すると考えられる。実際、評価者のコメントには、増子副大臣の評価意見のように、固定価格買取制度の導入についての期待が述べられており、コストを考える上で考慮すべきである。

他方、ヒット率の低さについて、新規地域において生産井掘削の成功率が50%程度であることは確かである。これは、地熱流体が断裂型地熱貯留層という薄く広がった存在であ ることに起因するものであるが、成功率50%という数値は世界に比べ、遜色のある数字ではない。さらに、これまで不成功とされた地熱貯留層に対しても、強制的に地熱流体の貯留可能な割れ目を造る技術(EGS)が研究されており、この技術により結果的に成功率を向上させ、また坑井の高寿命化を図ることもできる。米国や欧州では、これらの技術開発に力を入れており、わが国も世界各国と競って技術開発を行う必要がある。

現在、世界各国は、火山国・非火山国を問わず地熱発電開発に極めて積極的であり、世界第3位の地熱資源保有大国であるわが国は、2000年に世界第5位の地熱発電設備容量だったものが、2010年現在、世界第8位に転落したものの、わが国の地熱発電プラントメーカーは世界の地熱発電設備容量の70%のプラントを供給しており、高い信頼性と国際競争力は世界からも着目されている。

そのような高い技術力を持ったわが国の地熱開発が進まない理由として、上記の問題だけでなく、社会的な環境、すなわち、有望な地熱資源の80%以上が国立公園特別地域にあり、現状では発電所の建設が行えないことを一部でも解決しない限り、有望な新規開発地点を大幅に増やせない状況にある。また、地熱開発調査地域に隣接する温泉地との信頼関係の確保などを含め、民間等による地域個別の対応だけでなく、国としても、組織的な対応が必要と考える。

以上、今回の行政事業レビューでは、地熱発電開発は「廃止を含む抜本的改善」が必要とされたが、その指摘には正当でない面が少なくなく、低炭素社会を目指す中で、再生可能エネルギーとしての地熱利用はむしろ強化されるべきものと考えられ、評価結果の再検討を求めるものである。もちろん、指摘されている事項に対して、従来、完全に適切な対応がなされてきたかどうか、自ら十分検証するなかで、地熱界全体として、反省すべきは反省し、必要な改善を行うべきと考える。日本地熱学会としては、学術的な観点から、支援・協力を惜しまない所存である。