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設立の主旨

 我が国におけるエネルギー需要は、産業部門での伸びが緩慢であるのに対し、民生部門においては一貫して増加に傾向にある。このような需要増加に対して、エネルギー供給は石油を初めとする化石燃料によりまかなわれており、エネルギー供給に伴うCO2発生は地球温暖化の面で大きな問題となっている。このため、地球温暖化防止を目指したCO2排出抑制型社会への転換は、我が国における緊急の課題となっており、CO2発生の少ない再生可能エネルギーや新エネルギーや省エネルギー技術の研究開発が精力的に進められている。この一環として、最近、民生部門のエネルギー需要の中でも特に増加傾向の大きい熱需要に対応し、各種の未利用エネルギーの有効活用や省エネルギー技術の開発注目されている。地中熱利用はその中でも最も有望な技術の1つといえ、今後積極的な開発促進が図られるべきと考える。

 この地中熱利用に関しては、世界地熱会議2000でも明らかになったように欧米を中心にヒートポンプとの組み合わせにより急速に普及が進みつつあるのに対し、我が国ではようやくデモンストレーション的な普及が始まった段階で、大幅な遅れを取っている。しかし、最近、ヒートポンプを利用しない地中熱利用を含めて、国内における関心も高まり、研究例や現場での実績が積み重ねられつつある。

 このような情勢において、我が国における地中熱利用の促進は産官学が連携して取り組むべき課題と考えられる。その中で、地熱に関連する幅広い分野に数多くの会員が結集している日本地熱学会の地中熱利用に関する学問及び技術の進展、普及に対して果たす役割は大きいと考える。また、大学や研究機関だけでなく、多くの民間企業において、地中熱利用技術の関心が高まっている現在、中立的な組織である地熱学会の果たす役割は大きいと考える。このため、学会内に地熱熱利用に関する技術専門部会を設立し、関連する技術について活動を行うことを提案した。

 地中熱利用は地下の状況把握から、地中からの抽熱システムや地表の利用システムの設計、製作まで広範囲にわたるが、本技術専門部会では地下に関連する分野を中心として、下記4つの課題に整理して研究活動を進めることにする。

(1)地中熱利用システム
(2)地下予測技術
(3)環境関連技術
(4)掘削技術

 各研究グループの活動は、その分野での研究の方向性についての検討を通じて、現在必要とされている研究課題を明らかにするとともに、研究者間の情報交換を活発にすることを目標とする。

地中熱利用技術専門部会 初代代表
松永 烈(産業技術総合研究所)