地中熱利用促進懇談会との共催により、以下のような特別講演会&ディスカッションが行われた。
(1)日時:平成15年4月11日(金) 15:45~16:45
(2)場所:鉄鋼会館(東京都中央区日本橋茅場町3-2-10)
(3)内容:
テーマ:「諸外国での地中熱利用システムの現状と国内動向」
講演者:濱田靖弘 北海道大学大学院工学研究科都市環境工学専攻助手
濱田氏は、1995年に現職に就いて以降、一貫してローエネルギーハウスの研究に従事している。今回の講演は、落藤 澄(2002)「地下熱利用と地下蓄熱の現状と課題. 日本地熱学会誌, 24 315-327」からのデータも参照しながら、具体例を挙げて行われた。この中で、地中熱利用システムの本格的な導入にあたっては、民家1件あたりの設置費用を200万円程度におさえて行くことが必要であるとの指摘があった。また燃料電池との複合利用システムによる利点も指摘され、燃料電池など他の新エネルギーシステムと決して競合するものではないことが強調された。
講演後のディスカッションでは、濱田氏に対する質疑応答の他、会場の参加者による意見もだされた。主な内容は以下の通り。
Q1.井戸の掘削に関して、行政からの規制があると思うが、全国的にどのような状況か?
A.北海道・東北では規制が緩いが、首都圏では厳しい傾向がある。
A.基本的に井戸に関する規制は地盤沈下対策を目的として設定されたものであり、水のやりとりが無い熱利用だけの場合は規制の対象にはならない。温泉についても、熱の利用だけなら何ら規制されないという事例があった。
Q2.個人住宅へのシステム設置費用は200万円を目指すべきという指摘があったが、それは2次側(各部屋の空調システム)も含めての金額か?
A.2次側も含める。180万円の空気熱源システムが存在することを考慮した金額である。
Q3.燃料電池、マイクロガスタービンのコージェネに地中熱を組み合わせて(暖房、給湯に用いて)総合効率を上げるというのは、(電力側に対し)熱側の供給が少ないということか? コージェネでは廃熱が余剰になる場合が多いように思うが?
A.その通りである。夏季の大阪での状況などはそれにあたる。ただし、東北などでは、燃料電池では給湯で精一杯なので、地中熱利用によって熱を補うということになる。関東以北ではコージェネと地中熱の組み合わせが可能と思われる。
Q4.光熱費ゼロ住宅というのがあるが、これは地中熱利用と競合するものか? 光熱費がゼロになるのであれば、掘削費をかけて地中熱など利用しなくて良いということになるのではないか?
A.光熱費ゼロ住宅またはゼロエネルギーハウスを呼ばれるものは、巨大な太陽光発電装置をとりつけ、昼に発電した余剰分を電力会社に売り、夜には必要な電力を電力会社から買うことで、トータルとして光熱費ゼロとなる仕組みである。従来は600万円ほどしたのでペイバック期間が30年と長かったが、現在では150万円程度になりつつあり、現実的になっている。電力会社側としては、電力の制御等が複雑になるので敬遠する面もあるが、昼間のピーク電力供給量が抑えられ、夜間に電力を売れるというメリットもあるため、受け入れていくものと考えられる。一方、地中熱利用システムは、使用する電力量(=エネルギー)そのものを抑えるシステムなので、光熱費ゼロ住宅に対してもメリットがあり、競合するものではない。
以上