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●地域暖房(ちいきだんぼう)district heating
ある地域内の住宅、公共施設あるいは産業施設に、蒸気または熱水を1または数個所の熱源から、配管を通じて供給する暖房系をいう。全体としての熱効率、安全性などの点で従来の個別系よりも優れている。
地熱流体を利用した例としてはアイスランドの首都レイキャビクおよびその周辺の人口11万人の住宅その他に対する暖房系が有名である。この他ニュージーランド、ハンガリー、アメリカでも行われている。
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●地下還元(ちかかんげん)reinjection
地熱流体中の液体分をそれが貯留されていた層へ戻すことをいう。液体分としてはタービン通過後の蒸気の冷却による凝縮水、セパレーターで分離された熱水、発電用流体と熱交換した後の熱水がある。地下還元は排水による環境への影響を防止するため、あるいは、貯留層の圧力維持と貯留層への水の補給のため行われる。また、広く解釈して地熱流体を地下に注入することをいうこともある。
reinjection、injection、rechargeおよびwater disposalの4つの用語は互いに重複する概念を含み、時には同一の意味に用いられることもあるが、それぞれの主たる概念は異なるものである。
(1) 自然に行われる地下水の補給をrechargeという。
(2) 生産物を再びそれの貯留層に戻すことをreinjectionという。
(3) 地下に水を注入する行為をinjectionという。
(4) water disposalの1つの方法としてinjectionがある。
地下還元という用語はあいまいなものであり、“reinjection”の意味に解するならば「地熱流体の還元」とすべきであり、広く流体の圧入全般をさすならば“injection”に対応させ、「地下注入」とすべきである。
地熱流体の地下還元は以下の問題の解決のために行われる。
(1) 環境問題
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(イ) |
地熱流体が有害物質を含む場合、多くの熱水は高塩分であり、B、NH3、Asおよびその他の重金属を含んでおり、河川等に放流すると危険なことがある。 |
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(ロ) |
地熱流体が高温の場合、河川等への放流は悪い影響を与えることがある。
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(ハ) |
地盤沈下の恐れがある場合、砂岩や泥岩を主体とした堆積層内に地熱貯留層があるとき、多量の流体の汲上げにより、地盤沈下が発生する恐れがある。
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(2) 地熱貯留層の圧力維持と水の補給
地熱流体の生産により貯留層の圧力が低下し、生産量が減退することがある。これを防ぎ、生産量を維持するために生産量に見合うものを注入することが必要である。 |
●地熱(ちねつ)geothermy
地中の熱をいうが、大別して2つの意味に用いられている。1つは広く地球内部に保有される熱の意味に用いられる。一方、火山や温泉などに由来する地殻中の異常な熱に対して用いられる場合がある。
地熱の究極的源としては次の3つが考えられている。(1)始源熱(地球が生成された時もともと保有されていた熱)、(2)重力エネルギー(地球は太陽の周囲に散らばっていた塵が集積してできた、その際の衝突エネルギー、およびコア形成時にも重力ポテンシャルのエネルギーが放出される)、(3)自然放射性物質の壊変による熱(主として地殻中に含まれる自然放射性元素により現在も熱が生成されている)。
地熱地域において見られる異常な地表近くの熱はマントル上部で発生すると考えられるマグマへの地殻への上昇によりもたらされたものと考えられている。火山活動、温泉、硫気孔などに伴う熱はいずれもその源はマグマ活動にある。
地熱の利用は近年特に注目されるようになった。地熱発電、温水の多目的利用などはこの異常な熱の利用をはかるものである。一方平均的地温勾配のところでも深部にたくわえられた地下水は十分利用価値のある温度を有するのでその利用もはかられるようになっている。深層地熱水と呼ばれるものがそれである。
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●地熱エネルギー直接利用(ちねつえねるぎーちょくせつりよう)direct utilization of geothermal energy
地熱流体で発電を行なわずに、直接に地域暖房、給湯、産業用熱源、道路融雪などに利用する場合にこれを地熱エネルギーの直接利用という。地球流体と熱交換した二次流体を蒸気の目的に利用する場合も一般には含まれる。狭義の場合には地熱流体のみに限られる。 |
●地熱蒸気(ちねつじょうき)geothermal steam
地熱井より噴出する過熱蒸気または飽和蒸気。一般に地熱エネルギーの利用は、マグマ溜りの熱によって加熱された貯留層の地下水を、地上より坑井を掘削して取り出すことにより行われるが、この時地下水はその温度および汽水分離器の圧力に応じた乾き飽和蒸気と熱水とに分離する。貯留層の条件によっては熱水を伴わない過熱蒸気として噴出する場合もある。
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●地熱井(ちねつせい)geothermal well
熱水採取およびそれに関連して蒸気・熱水地熱地帯や高温岩体中に掘削される坑井。熱水生産用の坑井は生産井とよばれ、使用後の低温水を地層中に返送する坑井を還元井とよぶ。なお高温岩体中の人工貯溜層に注水するための坑井も還元井とよばれている。これら坑井の他地層中における熱水貯留状況、温度分布、熱流量などを調査するための調査井、さらに人工貯留層造成などに際し周辺に与える影響、貯留層の形状寸法などを観測する観測井がある。
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●地熱探査(ちねつたんさ)geothermal prospecting
二つの意味に用いられる。
(1) 地熱資源の探査、天然蒸気熱水その他深層熱水高温岩体などの地下の地熱資源を探すことについて用いられる。
(2) 地熱についての調査、地図、地温勾配など地熱に関する各種調査に対しての総称として用いられる。このような地熱探査の目的はもちろん地熱資源の場合が多いが、他種資源の調査にあることもある。ある種の金属鉱床の探査に地温調査が有用であった例もある。
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●地熱地域(ちねつちいき)geothermal area, geothermal field
地熱現象を有する地域のことで、具体的には、活火山・噴気孔・温泉・湯沼・異常に高い地中温度や大きな熱流量などをもっている地域をさす。 |
●地熱徴候(ちねつちょうこう)geothermal manifestation
地下に何らかの地熱活動が現に存在することによって現われる地表徴候のこと。具体的には、温泉の天然湧出や湯沼、自然噴気(噴気孔・硫気孔)あるいは地温が高いために周囲よりも雪が融けやすい、または積りにくいなどの現象をさす。また、地熱活動に付随するものとして地表地質の変質があるが、これは地熱活動の歴史を示すもので地熱徴候とはいえない。 |
●地熱発電(ちねつはつでん)geothermal power generation
自然が有する地下の熱源を利用して発電すること。熱源を取り出す方法は、地下坑井を掘削して天然の蒸気、熱水を取り出す方法と、高温岩体発電とがある。
発電方式は、坑井より噴出した蒸気あるいは熱水をフラッシュして発生した蒸気でタービンを駆動する蒸気発電方式、熱水を利用するバイナリーサイクル発電方式および蒸気および熱水を二相流のまま利用するトータルフロー発電方式などがあり、これら発電システムをまとめると次の如くである。
1.蒸気専用
1.1 背圧タービン
1.1.a 過熱蒸気
1.1.b フラッシュ蒸気
1.2 復水型タービン
1.2.a 過熱蒸気
1.2.b フラッシュ蒸気
2.バイナリー・サイクル
2.1 熱水専用
2.2 熱水蒸気併用
3.トータル・フロー・システム
このうち、過熱蒸気を使うか、フラッシュ蒸気を使うかは資源の状態によるもので、利用の側からは選択の余地はない。
背圧タービンはタービン出口圧力は大気圧であるが、復水器を設ければタービン出口圧力が下るので、後者の方が2倍以上の発電ができるが、復水器が必要であり、また、大抵の場合、冷却塔が必要となるので設計費が大きくなる。
復水型タービンの場合、排気圧が低いほど、熱落差が大きくなり、出力が大きくとれるが、最適排気圧力は冷却塔のコストと蒸気中に含まれる不凝結ガスの含有量によってきまる。
タービンの入口圧力と出口圧力とによって何程の発電ができるかは蒸気のエンタルピー・エンドロピー線図から大体の目当をつけることができる。
バイナリー・サイクルはサンシャイン計画で、熱水専用型と蒸気熱水併用型の二つのタイプのテスト・プラントがつくられた。将来はこれらが使われる可能性はあるが、現在の経済情勢では、特別の事情がない限り経済的に引合わないと思われる。
トータル・フロー・システムは、テストもまだあまり行なわれていないので、評価は難しい。
気液分離の必要がないこと、熱水のエネルギーが利用できることなど利点が考えられるが、タービンの腐食やスケールの対策はかなり難しいと思われる。 |
●地熱熱水(ちねつねっすい)geothermal hot water
地熱井より噴出する高温の地下水。通常その1/4〜1/5の蒸気(重量比)とともに噴出する。この熱水は温度によって多段フラッシュ発電、バイナリーサイクル発電による発電への利用、地域暖房、施設園芸などの多目的利用が行われる。
地熱温水にはヒ素などの有害物質を含んでいる場合が多く地下に還元されているが、この場合の多目的利用は河川水などと熱交換して行われる。
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●地熱流体貯留層(ちねつりゅうたいちょりゅうそう)geothermal fluid reservoir
地熱エネルギーによって高いエネルギーを獲得した流体を地熱流体と称する。この流体のある程度の量がまとまって含有される地層部分をいう。堆積岩で代表されるような多孔質触媒中に含まれている場合と割れ目中に含有されている場合がある。流体は主に天水を起源とする水であり、貯留層中に主に気相である場合と液相である場合がある。前者を蒸気卓越型、後者を熱水卓越型とよぶ。貯留層の上部には非浸透性の帽岩が存在する場合がある。地熱貯留層ともいう。
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