我が国の再生可能エネルギー利用に関する緊急提言

我が国の再生可能エネルギー利用に関する緊急提言
―効果的な固定価格買取制度(FIT)の導入を期待する―

平成21年10月5日
日本地熱学会

日本地熱学会は平成20年10月31日、「我が国の地熱エネルギー利用に関する提言」を取りまとめ、発表した。この提言では、地球温暖化問題およびエネルギー問題に重要な貢献をすることのできる我が国の地熱エネルギー資源の有用性が、政策担当者に十分理解されず、したがって、十分活用されていない現状を指摘した。そして、我が国が、真の地熱大国になり、持続可能な社会構築に貢献するために、政府を始め、各機関、そして国民が、我が国の地熱エネルギー利用促進に十分な理解を示していただくことを強く呼びかけるとともに、日本地熱学会がそのための努力を惜しまないことを宣言したものである。

2008年12月、経済産業省・資源エネルギー庁に「地熱発電に関する研究会」が設置され、我が国に地熱エネルギー資源が豊富に存在することを改めて確認するとともに、その開発利用において種々の障害が存在すること、そして、それらの改善に対する議論が真剣に行なわれ、現在、改善に向けた具体的な動きがなされている。同時に、同研究会では、2020年における地熱発電可能量を試算し、現在の地熱発電設備容量53万kWの3倍を超える166万kWを発表している。地熱発電は24時間安定して発電が可能であるため、この数値は、実際の発電量から見ると、太陽光発電設備1000万kWに相当するものであり、我々の足元には有望な再生可能エネルギー資源が存在しているのである。

さて、鳩山首相は、去る9月22日に開催された国連の気候変動サミットにおいて、我が国の地球温暖化対策の中期目標として、世界の全ての主要国が意欲的な目標に合意することを前提に、2020年において、1990年に比べて、温室効果ガス排出を25%削減することを国際的に公約した。これに対し、世界各国の首脳からは大きな称賛を受けるとともに、パン・ギムン国連事務総長は野心的と高く評価し、国際的な流れを変えるものと強く支持を表明した。

この25%削減という目標はたやすく実現できる数値ではないのは確かである。現に、国内では、産業界をはじめ、危惧する声があるのも事実である。しかし、そのような議論の中で、我が国において再生可能エネルギーがはたす役割に関する認識が大きく欠けていることを指摘したい。我が国には十分な再生可能エネルギーの供給ポテンシャルがあるのである。IPCCが警告する地球温暖化の進展状況、そして、エネルギー問題、特に、ほとんどのエネルギー資源を海外に依存している我が国は、自国に存在する再生可能エネルギーをより一層理解し評価すべきである。

現在、新しい政権の誕生に伴って、種々の分野で新しい動きがあり、再生可能エネルギーの利用に関しても積極的な政策が取られることを期待したい。このような中で、重要な再生可能エネルギー利用促進策と考えられる、固定価格買取制度(FIT)の議論が進められているが、旧政権による政策では太陽光発電だけが対象とされ、かつ、非常に限定的な運用が想定されている。温室効果ガス25%削減を目指すのであれば、固定価格買取制度の適用を再生可能エネルギー全体に広げ、かつ、実際に導入が促進されるように、適切な制度設計が行なわれることを期待したい。