今こそクリーンな安定電源である地熱発電の促進を
―制度改革でコスト削減と開発可能量増大化を、研究調査と技術開発でリスク低減を―
平成23年4月6日
日本地熱学会
東日本大震災により大規模発電所(原発、火力)が損壊し、電力供給が逼迫している。
地熱エネルギーは、クリーンで安定した再生可能エネルギーであり、低炭素社会の実現、大規模災害時の早期電源復旧、分散型電源などの新たな電力供給枠組みの構築に対し、学術的、技術的および政策立案のシンクタンクとして日本地熱学会は総力を挙げて協力する。
地熱発電は、
- 天候や季節に左右されない安定電源
- ライフサイクルCO2排出量は原子力以下
- 発電コストは再生可能エネルギー中で最も低いレベル
である。しかも日本は世界3大地熱資源保有国の一つでありながら、2000年以降地熱発電所の新設が無い(2010年現在設備容量53.6万kW、発電量30.6億kWh/年)。その主たる理由は以下の通り;
- 認可に要する時間(調査〜運開の年数が長いため、初期投資の利払い増加)、下記2.3.により最有望地域を開発できないこと等も、コストを上げている。
- 国立公園の開発規制:日本の地熱資源の80%以上が国立公園内にある。2010年に一部緩和規制が行われたが、海外並みの本格的な開発には更に大幅な見直しが必要。
- 温泉事業者からの反発:温泉影響の風評があるが、日本で地熱開発によって温泉湧出に影響が出た実例は無い。適切な事前調査と環境モニタリングにより、温泉へ影響しない地熱開発が可能なことを理解してもらうことが必要。
景気低迷も地熱開発妨げの一因である。地熱開発は見えない地下を扱うため、開発初期の掘削で必ずしも優良な地熱貯留層に当たらないリスクがあり、「失われた十年」に企業がリスクを伴う大規模投資を行う余裕はなかった。
現在の地熱発電単価は約20円/kWhだが、1.に記した通り制度改革によって単価は下がる。新エネルギー・産業技術総合開発機構による資源量評価が行われた地域だけでも、総 容量148万kW、90億kWh/年の地熱発電所新設が期待できる。その2倍の開発で福島原発の損失分が補え、国立公園内または海外並みの深部開発で可能性は一挙に広がる。またリスク軽減には継続的な調査研究が不可欠である。
従って地熱発電の大幅増進のために、1)国立公園等の大幅規制緩和、2)許認可のスピード化、3)学術調査と技術開発、が必要であり、1)と2)の一挙解決には「地熱法」制定を提案する。